新型のTAMRON製レンズでサポートされる事になった「TAMRON Lens Utility」というソフトの機能についてご紹介していきます。こちらのソフトは、レンズのUSB端子を通じてPCから各種機能をカスタマイズしたり、ファームウェアの更新ができる機能になります。
TAMRON(タムロン) 公式ページ
TAMRON Lens Utility
TAMRON Lens Utilityの使い方については、Youtube動画でも解説していますのでご覧ください。
現在はスマートフォンから操作できるTAMRON Lens Utility Mobile(解説記事へ)も登場しています。
TAMRON Lens Utilityの画面 ©
TAMRON Lens Utilityは、新たに登場しているレンズ「TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2(Model A063)」と「TAMRON 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)」、「TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD(Model A062)」に対応している機能です。今後新しいレンズについても、USB端子を備えた製品が登場していくと予想されます。
TAMRON 28-75mm F2.8 G2の外観。新たにフォーカスホールドボタンやUSB端子を搭載 ©
実際に使用するには、レンズ内のUSB Type-C端子を専用USBケーブル「Connection Cable(Model CC-150)」で接続します。そしてPC用のソフトウェアで各機能をカスタマイズする事ができます。
レンズのUSB-C端子に専用USBケーブルを接続 ©
レンズには、フォーカスセットボタンが新たに搭載されているのですが、こちらのボタンはSONY純正レンズの「フォーカスホールドボタン」と同じく、押している間はオートフォーカスを止めたり、カメラ側で呼び出せる機能をカスタマイズできるものになっています。
そして、ここまでは純正レンズと全く同じなのですが、TAMRONのレンズには、独自の機能も用意されています。予め好きな機能を登録、そして呼び出せるようになっています。
TAMRON Lens Utilityでボタンやフォーカスリングの動作をカスタマイズできる ©
例えば、次のような2点間のピント移動も簡単です!!
この新機能を実際に使ってみた感想は、まさに「痒い所に手が届く」という言葉が相応しい機能だと思いました!一眼レフカメラ用のレンズとは違い、レンズの各部が電子制御になっているからこそ、実現できる機能が豊富に搭載されており、使う方に応じてお好みの動作を割り振ることができます。
この後でも詳しく紹介していきますが、フォーカスリングの動作についても痒いところまで変更できるようになっています。フォーカスリングの回転方向を変更したり、回した時の移動スピードも2種類の中から変更できます。
下手すると、この機能を使いたいが為に、純正レンズではなくTAMRON製のレンズを選ばれる方も今後現れるかもしれません。という事で、TAMRON Lens Utilityの機能と何が出来るのか、引き続き詳しく見ていきましょう。
目次:TAMRON Lens Utilityの使い方と設定方法について
TAMRON Lens Utilityで出来ること
まずは、具体的な内容の説明に入る前に、TAMRON Lens Utilityを使って何が出来るのか全体像を見ていきたいと思います。
TAMRON Lens Utilityで出来ることの全体像 ©
詳しくはYoutubeでも解説を行っています。
TAMRON Lens Utilityで出来ること
フォーカスセットボタンの機能
レンズのボタンを短押ししたり、1秒長押しして様々な機能を呼び出せるようになります。
機能名称 | 説明 |
---|
フォーカスの自動送り出し | レンズ内のボタンで記録しておいたピント位置に向かって、自動でフォーカスを送り出す機能。2点間を移動させる「A-Bフォーカス」と、指定の位置へ移動させる「フォーカスプリセット」がある。 |
フォーカス/絞りリング機能を切り替え | フォーカスリングを回した時の動作をフォーカスまたは絞りの操作へ切り替えられる |
AF/MFの切り替え | オートフォーカスまたはマニュアルフォーカスへ切り替えられる |
カメラボディの機能割り当て | カメラ側でカスタムボタンの機能として任意の機能を割り当てられる |
設定なし | フォーカスセットボタンを押した時に誤作動を防ぐ用途で使える |
フォーカスセットボタンの機能画面 ©
TAMRON 28-75mm F2.8 G2では1つの機能をフォーカスセットボタンへ割り当てる事ができます。これに対して、TAMRON 35-150mm F2-2.8では、カスタムスイッチ1〜3が用意されており、3つの機能を割り当てることができます。
フォーカスリングの設定
レンズのフォーカスリング操作に関わる機能の設定ができます。
機能名称 | 説明 |
---|
MF回転方向の切り替え | フォーカスリングを回した時のピント移動方向を逆転できる |
MFレスポンス | フォーカスリングを回した時のピント移動速度をノンリニアまたはリニアに変更できる |
フォーカスリングの設定画面 ©
ファームウェアアップデート
レンズのファームウェアを更新できる。
以上のように、TAMRON Lens Utilityでは、設定できる機能が3つに別れています。カスタマイズ機能は、フォーカスセットボタンとフォーカスリングへ様々な機能を割り当てられます。特に、A-Bフォーカス、フォーカスプリセットはTAMRONレンズ独自の機能となっていて面白い内容だと思いました。
レンズとPCをUSBケーブルで接続しよう
TAMRON Lens Utilityを利用するには、まずソフトをインストールしておきます。レンズとのUSB接続方法は2通り用意されており、レンズ単体か、レンズがカメラに装着された状態でUSB接続できるようになっています。
詳しくは以下の動画でも解説を行っていますので、併せてご覧ください。
今回はカメラで動作を確認しながら設定変更が行える「カメラで確認しながらレンズカスタマイズを行う場合」を選択してみたいと思います!
まず始めにTAMRON Lens Utilityをインストールしておきましょう ©
ソフトが起動したら、今度はレンズをUSBケーブルに接続していきます。
レンズのUSB端子に専用のUSBケーブル「Connection Cable」で接続していきます ©
レンズのUSB端子に専用のUSBケーブル「Connection Cable」で接続していきます(2) ©
レンズをケーブルに接続したら、カメラの電源をONにします。カメラが起動したら、TAMRON Lens Utilityの開始ボタンを押して各種設定に移動します。
TAMRON Lens Utilityの設定方法と使用例
それでは詳しい設定例と使い方を見ていきましょう。まずはフォーカスセットボタンでカスタマイズできる内容について順番に解説していきます。
フォーカスセットボタン機能のカスタマイズ設定
レンズに備わっているフォーカスセットボタンを長押ししたり、1回短押しするなどの操作によって、次のような機能を呼び出すことができます。
TAMRON Lens Utilityのフォーカスセットボタンに割り当てられる機能 ©
A-Bフォーカス
先程のフォーカスプリセットと似ている機能ですが、A-Bフォーカスでは、フォーカス移動先の始点と終点を決めることができます。同様に、フォーカスの移動速度は-5
(低速)から2
(高速)まで8段階の中で、予め設定することが出来ます。
ABフォーカスの設定画面 ©
設定後、カメラレンズで可能な操作方法は次の通りです。
- 始点となるピント位置にピント合わせる
- フォーカスセットボタンを1秒以上長押しでピント位置を記録(A点の記録)
- 終点となるピント位置にピント合わせる
- フォーカスセットボタンを1秒以上長押しでピント位置を記録(B点の記録)
- フォーカスセットボタンを1回短押しで移動を開始
- フォーカスセットボタンをを1回短押すたびにA-B間を移動できる
任意の2点間をゆっくりとフォーカス移動させることができます。カメラ・レンズ単体でフォーカスを自動的に送り出しできるのは非常に便利な機能だと思いました!特に映像制作時では色々なシーンで使えそうですね。
ABフォーカスとフォーカスプリセットは、カメラのオートフォーカスがAFかMFの時に、少し動作内容が異なるのですが、詳しくはTAMRON Lens Utility内でもヘルプが用意されていますので、参考になるかと思います。
ABフォーカスの解説画面 ©
フォーカスプリセット
レンズのフォーカスセットボタンを押したタイミングで記録されたピント位置に向かって、ピント移動が自動的に開始されます。また、フォーカスの移動速度は-5
(低速)から2
(高速)まで8段階の中で、予め設定することが出来ます。
フォーカスプリセットの設定画面 ©
設定後、カメラレンズで可能な操作方法は次の通りです。
- 移動先となるピント位置にピント合わせる
- フォーカスセットボタンを1秒以上長押しでピント位置を記録
- フォーカスセットボタンを1回短押しで移動を開始
例えば、ピントをボカしたアウトフォーカスの状態から、目標のピント位置へ徐々にピント移動が始まる動画を撮影できます。その他に、夜景撮影やホタルの撮影でも活用できます。予め明るい時間帯のうちにピントを合わせておき、暗くなった時間帯にフォーカスセットボタンを押すだけで、目的の位置まで移動させると言った使い方も出来ます。
フォーカス/絞りリング機能切り替え
フォーカスリングの操作内容を、フォーカスセットボタンを押すタイミングで切り替えることができる機能です。切り替えるタイミングは1回短押しか、1秒以上長押しで発動させることができます。
フォーカス・絞りリング機能切り替えの画面 ©
AF/MFの切り替え
レンズのオートフォーカスを、フォーカスセットボタンを押すタイミングで切り替えることができる機能です。1回短押しか、1秒以上長押しのタイミングで、マニュアルフォーカスにしたりオートフォーカスを有効にできます。
AF/MFの切り替えの画面 ©
カメラボディの機能割り当て
フォーカスセットボタンの機能を、SONYのミラーレスカメラ本体から割り当てることができます。こちらの設定はSONY純正レンズのフォーカスホールドボタンと同じような使い方ができます。
カメラ側からボタンの機能をカスタムしている様子 ©
カメラ側からボタンの機能をカスタムしている様子(2) ©
カメラ側からボタンの機能をカスタムしている様子(3) ©
フォーカスリング機能のカスタマイズ設定
フォーカスリングのカスタマイズ項目は2つです。フォーカスリングの回転方向を変えたり、リングを回転した際のフォーカス送り出し速度を変更できます。それでは順番に見ていきましょう。
フォーカスリングの設定 ©
MF回転方向の切り替え
カメラ側でマニュアルフォーカスにした際に、フォーカスリングを回した時の移動方向を逆転させることができます。
フォーカスリング回転方向の切り替え ©
これまでカメラメーカーによっては、フォーカスリングの操作とピントの移動方向が逆となっており、困惑されていた方にとっては有り難い機能ですね!
MFレスポンス(リニア・ノンリニア)
旧モデルとなるTAMRON 28-75mm F2.8 第一世代では、フォーカスリングを速く回すと、ピントの移動が非常に速くなり、ゆっくり回すと、非常に細かいピント移動となる動作でした。
マニュアルフォーカスの挙動は、ピントリングの回転速度に対して非線形な反応をする動作(ノンリニア)に作られていましたが、今回のTAMRON Lens Utilityではリニアにも変更できるようになりました。
MFレスポンスの設定 ©
リニアでは、フォーカスリングの回転角度に対して均等にフォーカスの送り出しが可能になります。TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2(Model A063)の場合は、フォーカスリングを360度回すと最短撮影距離から無限遠まで移動できます。
TAMRON 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)ではリニア角度を4種類選ぶことが出来ます。
写真撮影では、素早く目的のピント位置まで送り出せるノンリニアが向いていると思いますが、ゆっくりとしたフォーカス送り出し操作を行う動画撮影では、リニアの方が都合が良い事が多いです。
特にジンバル機材などに用意されるフォローフォーカスや、Tilta・SmallRigなどの手動フォーカスでピントの送り出し操作をしたい時には、リニアとの相性が抜群です。
フォーカスモーターの装着例。写真のようにマニュアルレンズに向いている機能ですが、リニアに設定したレンズにも相性が良さそうです。 ©
Tilta製 手動フォローフォーカスの外観 ©
用途に応じてフォーカスリングのレスポンスが自由に変更できるのは大きなメリットだと思いました!
ミラーレスカメラ用レンズだから出来るカスタマイズが素晴らしい
いかがでしょうか。今回はTAMRON Lens Utilityで出来ることをお伝えしていきました。
USB端子を備えていない従来レンズ製品では、残念ながらこういったカスタムは行えないのですが、「TAMRON Lens Utility」がサポートされているレンズでは、非常に自由度の高いカスタマイズが可能です。今回実際に新型レンズとカスタマイズ機能を利用してみて、メリットは大きいと思いました!
特に、カメラレンズ単独から呼び出せる、ABフォーカスやフォーカスプリセットなどの自動的なフォーカス送り出しや、MFレスポンスの設定変更は、今のところ、TAMRONレンズならではの機能となっています。動画撮影を楽しんでいらっしゃる方には凄く嬉しい機能ではないでしょうか。
また、従来一眼レフカメラでタムロン製のレンズを使われてた方にとっては、フォーカスリングの回転方向が純正レンズと違うという悩みを抱えてた方もいらっしゃると思います。
今回の新たに登場している第二世代の28-75mm F2.8レンズや、35-150mm F2-2.8では、その辺りも解消されますので使い勝手が良くなっています。撮影者のフィーリングに合う設定を簡単に調整できる機能なので、ぜひお試ししてみてください!