ミラーレスカメラの動画撮影時に起こる発熱や温度上昇の様子をサーモカメラで計測してみました!ミラーレスカメラの写真撮影では問題になりにくい問題ですが、動画撮影では4Kや60Pなどの設定すると、ヒートアップしてしまう事が多いと思います。別の解説記事ではカメラの熱対策についてご紹介していますが、当記事ではカメラの表面温度を見ていきます。
今回検証に利用したカメラは、Sony α7SIIIとα7IVの両機種。動画撮影中にカメラ本体が何℃まで熱くなるのか、サーモグラフィカメラで撮影してカメラボディの表面温度を測定すると、具体的にどこまで温度上昇していくのか見えてきました。今回の記事では調べた結果をブログで随時ご紹介していきます。まず先に結論ですが、このような違いになりました!
ミラーレスカメラの動画撮影時に起こる温度上昇の様子をサーモカメラで計測してみた ©
計測に使ってみたのは以下の製品です!HIKMICRO(ハイクマイクロ)というメーカーから出ているサーマルカメラを入手してみることに!
【サーマルイメージャー】サーマルカメラはオブジェクトに直接接触することなく、赤外線のエネルギー(熱)を感知して画像に変換する非接触装置です。熱画像範囲は-20°Cから550°Cでほとんどの状況に対応できます。現在はスマートフォンに対応した計測器も登場しています。
サーマルカメラは、FLIR(フリアー)というメーカーのFLIR ONE Gen3やPROが有名なようですが、口コミを読んでみて、長く使えそうなHIKMICRO E1Lを選んでみました。実はカメラの温度を測るという用途ではなく、照明機材の溶着を防いだり、電源配線の高温となる部分を可視化したくて購入しました。記録したサーモグラフィーの画像は本体内でJPEGファイルとして記録できます。
今回計測に使ったHIKMICRO E1L ©
話を戻しますが、実際にどれくらいの温度差があるのでしょうか…?更にどの部位が熱くなるのか、順番に見ていきましょう。
目次:α7SIIIとα7IVで動画撮影の発熱温度を比較してみた
動画撮影時の熱暴走問題とカメラ機種による違い
Sony α7SIIIとα7IVや、その他のミラーレスカメラを使って動画撮影する際、気になるのが発熱と熱停止問題です。ミラーレスカメラでは長時間の動画撮影を行うと、カメラ本体がヒートアップしてしまい、途中で記録を止めてしまう場合があります。
巷では、カメラの「熱暴走問題」と呼ばれていますが、厳密にはカメラ内部の半導体を始めとした電子機器が熱暴走を起こす前に、カメラのシステムが強制的に電源OFFにする処理を行ってくれるので、熱暴走が起きない機種が殆どだと思います。
最近はPanasonic製のミラーレスカメラをはじめ、カメラ本体内にクーリングファンを搭載したFX3やFX30も登場しているので、長時間の4K動画撮影や10bit、120fpsや60fpsなどの高フレームレートで映像を記録したい時には、そちらのカメラやビデオカメラを使うのがおすすめかもしれません。また、他社メーカー製品でしたら、PanasonicのGH6、S5IIなどが有名ですので、そちらやSONY FX6などの業務用カメラを使われている方も多くいらっしゃると思います。もしかしたらiPhoneなどのスマートフォンも熱に強いのかもしれませんね。
私の場合は、ミラーレスカメラで写真を撮る割合が多く、長時間撮影をそれほど頻繁には行わないので、以下の記事でご紹介している方法で熱停止対策を行っています。
上記の記事の中でもご紹介していますが、こんなようなセッティングで熱暴走対策しています。
カメラを購入後は、1年以上この熱対策で問題なく運用できていますので、今後も上記の方法で使って行こうと思っています。
話を本体に戻しますが、動画撮影時の発熱状況はカメラモデルによっても内部の処理が異なるようです。カメラによって画素数も違いますし、機種によってはボディの筐体や内部の電子機器、放熱機構も異なると思いますので、当然と言えば当然の結果かもしれません…。
現在、私の使ってるSONY α7SIIIとα7IVを比べてみると、α7SIIIの方が明らかに発熱は穏やかで、背面液晶ディスプレイの裏側を手で触ってみても感覚的に温度差があることが分かっています。比較すると、α7IVは非常に熱くなりますので、長時間の撮影時に不安に思うときがありました 😅
α7SIIIとα7IVで4K30P10bit撮影時の発熱温度
では実際にα7SIIIとα7IVを並べて、動画撮影を行っていきます。
α7SIII(左)とα7IV(右)で動画撮影モードにして撮影 ©
実際に動画撮影を行う際にはどちらも背面ディスプレイを開いて検証を行ってみました。
動画撮影時には背面ディスプレイを開いて開始する ©
撮影の都合上、カメラ2台を撮影する際にだけ、上部に時計を配置しています。
動画撮影時には背面ディスプレイを開いて開始する ©
サーモグラフィーカメラで見ていくと、カメラ起動後の数分経過した直後でも、α7IVの背面の方がわずかに温度上昇しているのが分かります。
録画開始前の温度計測結果 ©
サーモグラフィーカメラの温度の見方
実際に計測した結果を見ていく前に、まずはサーモグラフィーカメラで写した温度表示の見方について説明します。
サーモグラフィーの見方
サーモグラフィーの画像では、赤色の十字アイコンが画面内で最も熱い箇所を示しています。更に右下の「max 53.0」が熱い箇所の温度を示しています。上側のスケールでは温度を色分けによって把握できます。例えば下記の画像の例で、各画面の情報を見ていきましょう。
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
赤い十字
画面の中でも最も熱い箇所。上記の画像の例では、SONY α7IVの背面部が最も熱いことが分かります。
max (例:53.0
)
赤い十字で示した箇所の温度
緑の十字
画面中心の箇所。上記の画像の例では、奥の白い背景部の温度を計測して、画面左下に温度として表示しています。
左下の温度 (例:24.5
)
緑の十字で示した箇所の温度。上記の画像の例では、奥の白い背景部の温度が計測されています。
4K30Pで動画撮影時の温度上昇
では早速、SONY α7SIIIとα7IVで4K30P 10bitで動画撮影した時の温度上昇の様子をサーモグラフィーで確認してみました。
カメラ設定項目 | 検証時の設定内容 |
室温 | 24.7℃ (気流の発生しにくい室内) |
動画設定 | 4K30P 10bit (XAVC S: MPEG-4 AVC/H.264) |
手ブレ補正 | 有効(スタンダード) |
記録メディア | SDカード |
AFモード | AF-C (但し、レンズキャップを付けたままの検証でした) |
電源 | NP-FZ100 (純正バッテリー) |
電源オプション | 自動電源OFF温度を「高」に設定 |
自動電源OFF温度を高に設定しておく
α7SIIIとα7IVでは、本体内の設定メニューにある「MENU」→「セットアップ」→「電源オプション」→「自動電源OFF温度」の設定を「高」にしておきます。
「自動電源OFF温度」は、SONYのミラーレスカメラで撮影時に電源が自動で切れる温度の設定を変更できる設定項目になります。通常は「標準」となっていますが、「高」にすることで、本体温度上昇による強制停止の上限を引き上げ、長時間撮影できるようになります。
更に動画撮影中には、カメラの背面がとても熱くなりますので、背面液晶を開いておくのがおすすめです。
ただし、前半でも触れたとおり、外部の温度によっては「自動電源OFF温度:高」に設定しただけでは対策が不十分で、カメラ本体が高温となって強制停止してしまう事もあります。特にSONY α7Vの場合は熱暴走対策した方が無難ですが、今回は検証のため、カメラ本体をそのまま使って動画撮影を行っていきます。
4K30P:約35分後の温度上昇の様子
まずは4K30FPSで動画の録画を開始して、約35分経過した後のSONY α7SIIIとα7IVの様子です。
約35分経過(外観撮影のため、一時的にディスプレイを閉じています。時計も一時的にカメラ上部へ配置しています) ©
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
続いてSONY α7SIIIのみ、サーモグラフィの計測エリア内に入れて計測してみます。最も熱い箇所が41.5℃
となりました。
温度計測結果:α7SIII ©
これに対してSONY α7IVの表面温度を見ていきます。最も熱い箇所が54.0℃
です。この時点でα7SIIIとα7IVで12.5℃
くらい温度差があります。
温度計測結果:α7IV ©
α7SIIIの方は、α7IVに比べると熱のムラが少なく、カメラ背面部の中央が熱くなるようです。これに対して、SONY α7IVの方はファインダーの直下から僅かに左側が熱くなるようです。別の記事で解説している冷却ファンを使った放熱対策では、この箇所を冷却すると効果的かもしれませんね。
4K30P:1時間47分後の温度上昇
最終的にはSONY α7SIIIとα7IVの両機種とも1時間47分まで、4K30P(10bit)収録できるのを確認しました。室温25℃前後では、どちらの機種も熱停止することなく連続して長い時間動画撮影できるようです。
約1時間47分経過(外観撮影のため、一時的にディスプレイを閉じています。時計も一時的にカメラ上部へ配置しています) ©
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
計測に多少誤差があるかもしれませんが、SONY α7SIIIは最も熱くなっている箇所が44.9℃
です。
温度計測結果:α7SIII ©
続いて、SONY α7IVの最も熱くなっている箇所が57.1℃
という結果になりました。α7SIIIとの温度差は12.2℃
です。
温度計測結果:α7IV ©
4K60Pで動画撮影時の温度上昇
続いて、SONY α7SIIIとα7IVで4K60P 10bitで動画撮影した時の温度上昇の様子をサーモグラフィーカメラで確認してみました。
今度は室温も4K30Pの時よりも高めにして検証してみました。
カメラ設定項目 | 検証時の設定内容 |
室温 | 25.4 〜 27.1℃ (気流の発生しにくい室内) |
動画設定 | 4K60P 10bit (XAVC S: MPEG-4 AVC/H.264) |
手ブレ補正 | 有効(スタンダード) |
記録メディア | SDカード |
AFモード | AF-C (但し、レンズキャップを付けたままの検証でした) |
電源 | NP-FZ100 (純正バッテリー) |
電源オプション | 自動電源OFF温度を「高」に設定 |
今回もカメラの設定である「自動電源OFF温度」の項目を「高」にしておきます。
開始時の様子 ©
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
4K60P:約10分後の温度上昇の様子
まずは4K60FPSで動画の録画を開始して、約10分経過した後のSONY α7SIIIとα7IVの様子です。動画記録を開始して10分で、α7SIIIは38.0℃
でしたが、α7IVは既に50.0℃
まで上昇してしまいました。
約10分経過 ©
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
温度計測結果:α7SIII ©
温度計測結果:α7IV ©
4K60P:約20分後の温度上昇の様子
続いて、4K60FPSで動画の録画を開始して、約20分経過した後のSONY α7SIIIとα7IVの様子です。20分経過しても、両機種とも徐々に温度が上昇していき、α7SIIIは43.1℃
、対してα7IVは56.5℃
まで上昇しており、まだまだカメラボディの表面温度が上昇しそうな勢いです。
約20分経過 ©
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
温度計測結果:α7SIII ©
温度計測結果:α7IV ©
4K60P:約1時間後の温度上昇の様子
続いて、4K60FPSで動画の録画を開始して、約1時間経過した後のSONY α7SIIIとα7IVの様子です。どちらも4K60Pの連続動画撮影が出来ています。
両機種とも温度が高い水準で上がっており、α7SIIIは48.8℃
、対してα7IVは61.6℃
まで上昇していきました。α7IVの方は60度以上となっていますが、まだ温度警告表示は表示されていません。
約1時間経過(外観撮影のため、一時的にディスプレイを閉じています。時計も一時的にカメラ上部へ配置しています) ©
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
温度計測結果:α7SIII ©
温度計測結果:α7IV ©
4K60P:約1時間20分後の温度上昇の様子
続いて、4K60FPSで動画の録画を開始して、約1時間20分経過した後のSONY α7SIIIとα7IVの様子です。どちらも4K60Pの連続動画撮影が出来ています。
両機種とも温度が高い水準で上がっており、α7SIIIは50.5℃
、対してα7IVは64.6℃
まで上昇していきました。α7IVの表面温度は65度近くまで上昇し、ついに温度上昇警告が表示されました。カメラ内部は更に高温になってると思います。
約1時間20分経過(外観撮影のため、一時的にディスプレイを閉じています。時計も一時的にカメラ上部へ配置しています) ©
温度計測結果:α7SIII(左)とα7IV(右) ©
温度計測結果:α7SIII ©
温度計測結果:α7IV ©
4K60P:約1時間38分後の温度上昇の様子
SONY α7IVのバッテリーが残り1%となりましたので、この段階で動画撮影を停止しました。室温が27.1℃
となっていましたが、この段階でもα7SIII、α7IVともに1時間30分を超える4K60P 10bitの動画撮影が連続的に行える事が分かりました。
昨年検証した時には室温22℃の環境で、α7IVを使って4K60P 10bitを動画撮影すると、わずか40分ほどで強制停止してしまったのですが、ファームウェア・アップデートにより発熱の様子や強制停止される温度条件が緩和されたんでしょうか!?具体的な理由は不明です。
最終的に、α7SIIIは51.0℃
、対してα7IVは64.8℃
まで上昇していきました。カメラ背面部の表面温度が65度付近に達すると、α7IVでは温度警告が表示されるようです。
約1時間20分経過(外観撮影のため、一時的にディスプレイを閉じています。時計も一時的にカメラ上部へ配置しています) ©
温度計測結果:α7SIII ©
温度計測結果:α7IV ©
SONY α7SIIIとα7IVの発熱温度差は10度以上に
今回は室温約25℃前後の環境で動画撮影した際に、カメラの背面部の温度がどれくらい変化するか、サーモグラフィーカメラ(サーマルカメラ)で計測してみた結果をご紹介してみました。サーマルカメラは遠赤外線を検出することで、対象物の温度を検知できる仕組みだそうです。
実際に動画撮影中のSONY α7SIIIとα7IVを比べて見ると、体感でも熱さが分かるくらい差が実感できますが、数値で見比べてみると、かなり温度差があることが分かりました。ただ、計測結果はあくまでカメラボディ表面の温度ですので、内部はもっと熱くなってると思います。
夏場だけでなく、冬でも室温が20度以上の環境で撮影することは多いと思いますので、α7IVを使う際には温度情報に注意する必要がありそうです。実際にカメラの温度を計測してみた結果としては、α7IVの4K30P 10bitであればカメラ単体でも1時間半以上の動画撮影ができそうです。4K60Pの場合は、室温に注意しながら撮影すれば、1時間半を超える撮影が可能になるようです。(ただし冷却を行いながら撮影を行った方が安定性は高そうです)
α7SIIIでは4K30Pや4K60Pのどちらでも余裕を持って動画撮影ができそうです。
α7SIIIの方は温度が上昇するものの、警告が出るほどではなく余裕がありました。これに対してα7IVは4K60Pで撮影すると、温度警告表示される場合もあり、少し不安定です。
調べ方がかなり雑でしたが、もし興味をお持ちの方は是非サーモカメラで調べてみてください!スマートフォン用の手軽なものまで沢山ありますので♪
FLIR ONE Gen3は、スマホ・タブレットに接続して使用する4,800画素の小型赤外線サーモグラフィカメラです。