SEKONICのカラーメーター「スペクトロマスター C-800」を購入しましたので、ブログで使用感や使い方を解説したいと思います。セコニックC-800とは、照明や環境光の光を計測して、色温度や明るさ等の光の特徴を詳しく知ることができる機器です。
商品撮影やYoutube動画を撮影するために、絶対に導入しておいた方が良いだろうと思い購入してみました!
様々な光源(LED、HMI、タングステン、蛍光灯、自然光、フラッシュ光等)を380nm-780nmの波長範囲で測定可能。CRI、SSI 、TLCI、TLMF、TM-30-15の評価モードを搭載、各種の演色評価モードに対応。x,y色度座標やHue、Saturtionのテキスト表示が可能。
使い方はとってもシンプルです。本体の右側面にあるボタンを押すと一瞬で計測結果が出ます。実際にC-800を使って大型LED照明の色温度や演色性を調べている様子を、Youtubeの動画で紹介していますので、次の動画をご覧ください。
少し分かりにくいですが、左がセコニックC-800、右が照明機材の設定画面です。
動画用の照明機材は明るさを変えると、色温度が変わってしまうことが多いので、明るさを変えて色温度が変化するのか検証を行ってみました。C-800は機能が沢山備わっており、全てを知り尽くすのは難しいようです 😅 (それくらい凄い計測器だと思います)
当記事では、個人的に使っている機能を中心に使い方や効果をご紹介していきたいと思います。また今後、徐々に理解した評価方法などを追記していきたいと考えています。
目次:SEKONICのC-800の使い方とレビュー
ホワイトバランス(WB)を正確&短時間に合わせる事が可能に
今回SEKONIC C-800を購入した理由は、素早く撮影したい光の環境を作りたかったからです。カラーメーターを使うと、新たに購入した照明機材のLEDライトや、カメラのストロボ、環境光などの色温度や演色性や照度を調べて、複数の照明のホワイトバランスを短時間で揃えることも簡単にできます。
それでは、カラーメーターを使わずに、ホワイトバランスを揃えたり、求めるホワイトバランスを得ることは可能なのでしょうか!?
実際のところ、肉眼でWBを揃えたり、グレーカードや白い紙を使って調整する事も可能です。ただし、1つ1つ調べるためには、かなりの時間と労力が必要になります。そして何より、正解が分からない不安も伴います。
セコニックC-800でLEDを測定した結果 ©
そこで、C-800のようなカラーメーターを導入すると、光のスペックを数値で知ることができるので、労力や悩みが一気に解消されます。
人間の目と脳は、明るさや色に対して順応する能力が高いので、逆の見方をすれば、一定の値を知ることが非常に難しいです。そこでカラーメーターのように機械的、かつ数値による判断ができるのは大きなメリットになるのではないでしょうか ☺️
最近では、Godoxさんを始めとした、照明機材メーカーなどからもレビュー依頼を頂くことがあります。照明機材の性能を言葉で理論的に説明するのは難しいので、使用感想を定量的に説明する際にもSEKONIC C-800が非常に役に立ちました。
以下のLEDライトでは、C-800で計測した結果をもとに、LEDライトを導入するメリットを説明することができました。
カラーメーターのSEKONIC C-800で何ができるの?
では、セコニックC-800の機能を簡単に見ていきましょう。C-800を始めとするカラーメーターでは、光の特徴を様々な評価方法で知ることができます。その計測時間は冒頭の動画でもご紹介したように、驚くほど一瞬で終わります。
照明機材は光の性能や性質を自身で調べたり、管理するのは簡単ではありません。C-800を導入する前は、商品の仕様を鵜呑みにするしかありませんでした。
照明機材が本当に商品説明どおりの性能を発揮してかは謎のまま…。 ©
また、個人的な事情として、様々な照明機材を使用する機会が増えてきましたので、カラーメーターによる一定の測定結果を知りたいという気持ちが年々強くなりました。
セコニックC-800に搭載された比較モード
SEKONIC C-800では、複数の測定結果を並べて表示できる比較モードが搭載されています。例えば、以下は太陽光とLEDの演色性を左右に並べて比較しているCRI比較モードを使用した時の様子です。
セコニックC-800による演色評価数の比較(左が太陽光。右がLEDライト) ©
太陽光は各評価の結果が非常に高く、良質な光とされています。太陽光とLEDを比べて、どの程度の演色性なのかや、複数のLEDライトの性能を感覚的に比べることもできます。
詳細な演色性が分かるTM-30-15が搭載
SEKONIC C-800だけでなく、従来モデルのSEKONIC C-700にも搭載されているCRI(平均演色評価数)という評価項目についてですが、実は評価している色はR1
からR15
までの15色までしか無いようです。
この15色の中には人肌や血の色など、写真や映像などで頻出する代表的な色が評価対象となっています。
SEKONIC C-800では、更に色を増やした99色による評価「TM-30」とういう項目が追加されています。
セコニックC-800によるTM-30-15の測定結果 ©
黒い円に収まっている光ほど、色の偏りが少なく忠実な色を表現できる光だと分かります。
- Rg:光の飽和を示す値。理想値は100。100より高いと各色の成分が飽和している事が分かり、100より低いと飽和が低い。
- Rf:基準の色に近いかどうかを示す値。理想値は100。色相がズレていると、TM-30のグラフからベクトル(矢印)で知ることができる。
C-800は起動と校正が速い
従来モデルのSEKONIC C-700は起動までに掛かる時間が長いようです。また起動時に定期的に行うダーク補正という作業があるのですが、その補正時間も掛かるという口コミが見られました。
C-800ではこれらの問題が改善されているようで、実際に使用してみると問題なく快適に動作しています。
カラーメーター C-800の簡単な使い方。複数の照明色を合わせる
それでは、セコニックC-800の簡単な使い方をレビューしたいと思います。今回は
- 部屋に備え付けのシーリングライト
- 色温度の調整可能なLED 2台
の2種類のLED照明に対して、セコニックC-800で色温度を計測して、可能な限り近い色合いに揃えてみました。今回使っている照明はそれぞれで、色温度の調光機能が備わっていますが、LEDライトの方で色合いを合わせるように調整したいと思います。
部屋の照明と2台のLEDライトの色合いをC-800で揃える ©
部屋のシーリングライトをカラーメーターで計測
まずは、部屋のシーリングライトに向かってC-800を向けて、本体右側面になるMaesureボタンを押します。計測する際には、他の照明を消して計測しました。
まずは部屋の照明を調べる ©
計測してみた結果は4149K
でした。暖色の傾向のようです。
LEDライトをカラーメーターで計測して色温度を調整
続いて、LEDライトの色合いを計測しながら、本体で色温度の調整を行います。計測する際には、部屋のシーリングライトを消して、LEDライトの光のみにしておきます。
LEDの色温度を計測しながら微調整を行う ©
計測した結果を見ながら、徐々にLEDの色温度を変更していきます。今回はこちらのLEDを使用しています。
部屋の色温度とかなり近い値になった ©
計測したホワイトバランスの値をカメラに設定して撮影する
初めに計測しておいた部屋のシーリングライトに近い色温度になりました!
簡単な流れですが、複数の照明色を統一できました ©
今回は簡単な手順ですが、異なる機材間の照明色を揃えることができました。スマートフォンで手軽に撮影を楽しむこともできますし、一眼カメラなどで4149K
に近い値のホワイトバランスを設定して撮影すると、綺麗に撮影することができます。
効率よく自然な色あいで写真&動画撮影を行う基準として
写真編集ではレタッチ。動画編集ではカラーグレーディング、またはカラーコレクションと呼ばれる作業によって、色合いを調整していくケースは多いかと思います。
例えば、白い背景で小物や商品撮影をしたい時、撮影するたびにホワイトバランスを調整していると大変で、作業時間も掛かってしまいます。
白い背景で一定の撮影品質を作る際に、環境から準備してみた ©
私の場合、室内の同じ場所で繰り返し撮影する場合には、次の流れで撮影環境を固定しています。
照明の位置と色合いを固定
カラーメーターで複数の照明の色温度を計測しておき、可能な範囲(±200K
くらい)で揃えておきます。また照明の位置も固定しておきます。
ディスプレイ設定を固定
カラーメーターの他に、是非とも揃えておきたいのがモニターです。
写真編集や動画編集で使う画面は、キャリブレーションしたモニターディスプレイを使います。さらに、一定間隔で自動キャリブレーションできるものを使い、画面の色合いも一定品質を保てるようにしておきます。
編集パラーメーターを固定
写真や動画編集で行う色調整も、同じ設定を使いまわします。
この3つの条件を同じにしておくと、撮影から写真&動画編集までの時間が素早く効率的になります。また、似たような品質を量産することが可能になります。
動画編集時の3D LUTファイル作成にも便利
カメラ機材や収録用機材を変えると、色の出方やトーン、コントラストが変わってしまう事もよくある話です。そんな時にも、前述の3つの条件を揃える事ができれば、機材間の違いを知るのに役立ちます。
最終的には機材を置き換えても、似た雰囲気の色合いを再現することもできます。
手順としては、
- 照明とディスプレイの環境を整えておく(前述の1と2を参照)
- 色調整すべきパラーメーターを作る
例えば次の写真では、動画撮影したものの静止画を切り出した画像になります。撮影環境は、3つの照明機材を使っており、色温度を5200K
付近に揃えておきます。カメラのホワイトバランスも5200K
に設定して撮影しました。
調整前 ©
光の条件は整っているので、後はカラーチャートを見ながら自然なトーンに調整してくだけです。
調整後:カラーコレクション適用後 ©
今回の作業では、新しい収録機器で撮影した直後の動画データを使って、カラーコレクション(色調整)を行うための3D LUT
ファイルを作ってみました。これも光の色合いが許容できる誤差の範囲内で、一定に保たれている事によって短時間で素早く作ることができます。
あとは3D LUT
を適用するだけで、繰り返し同じトーンの動画を量産することができます。
また、基準としているカメラ機材や、収録機材との比較も行いやすいので、異なる機材へ移行したい時にも、色合いやコントラストがどれくらい違うかも、すぐに見分けが付きます。
2つの収録機材のトーンの比較。コントラストや輝度に応じてホワイトバランスがどれくらい崩れるかも判別しやすい。 ©
こういった作業を行うためにも、撮影する光が狙った色温度になってることが条件になってくるかと思います。以上のように撮影する環境を整えるのに便利なのがカラーメーターです。
SEKONIC C-800と旧モデルC-700やC-500との違い
セコニックの商品として有名なのは、露出計とカラーメーターです。中でも今回触れているC-800は光の
などが分かる製品です。従来製品としてはSEKONIC C-700があります。
・可視光内の光に含まれる色の成分を可視化した分光分布グラフを表示できます・測定範囲は定常光で色温度が1600-40000K,照度が1-200000lxという広範囲を実現・従来の色温度や照度以外にも光源の演色評価を測定する事ができます。従来の色温度や照度以外にも光源の演色評価を測定する事ができます
また色温度を知りたいという事に限定すれば、SEKONIC C-500なども使用できるかと思います。
特に、C-700とC-800は見た目がよく似ており、機能の違いが分かりにくいのですが、大まかに次の違いがあるようです。
セコニック C-800の取扱説明書(PDF)
SEKONIC C-800の説明書については、メーカーであるセコニックさんのホームページにて公開されています。詳しくは以下をご覧ください。
SEKONIC スペクトロマスター C-800 取扱説明書(pdf)