複数の一眼レフやミラーレスカメラを、高画質なWebカメラとして利用できるATEM miniを購入しましたので、接続例や使用例を詳しくレビューします。
ATEM Miniは、BlackmagicDesign社から発売されている4chのHDMI映像スイッチャーです。機能を簡単に説明すると最大4つのHDMI映像入力を切り替えられる機器です。本体の1から4までのボタンと各HDMI入力端子が対応しており、本体のボタン操作によって映像を切り替えることができます。また、USBケーブルで接続されたPCではATEM MiniがWebカメラとして認識されますので、ライブ配信や映像のキャプチャーができます。
最大4つの映像を本体のボタンで切り替えて、PCでモニタリングやWebカメラとして認識(キャプチャー)させることができます。映像入力:HDMI 4系統、アナログオーディオ入力:2系統。出力:HDMI 1系統(1080pまで)、USB Type-C(Webcam出力対応)。上位機種として4つの入力を同時モニタリング・USBフラッシュディスクへの記録ができるATEM mini Proがあります。
ATEM Miniの外観 ©
発売日は2019年11月。寸法サイズは幅237.5mm、高さ35mm、奥行き103.5mm。重量は550gです。
また、ATEM Miniには上位モデルのATEM Mini ProやPro ISOがラインナップされており、4つの映像入力をマルチビューさせたり、外部のUSBフラッシュディスクへの映像収録が可能になります。
ATEM Miniでは、SkypeやYoutube、Zoom、OBS Studioなどのライブ配信などに最適です。私の場合は地元の映画祭のライブ配信などをお手伝いする際に使ったり、自身のYoutube製品レビューで活用しています。
ライブ配信の様子はこちらのYoutube動画でご覧いただけます。映画の再生や、映画に携わった方のコメント、会場の司会のカメラの映像をATEM Miniで切り替えながらライブ配信を行っています。
目次:一眼レフカメラをWebカメラ化できるATEM miniのレビュー
私が使うATEM Miniのカメラ接続例
まずは、私が最近使っているATEM Miniの接続例をご紹介します。
ATEM Miniとカメラなど各機材の接続例 ©
詳しい内容は、次の項目で良かった点を交えながらご説明します。一部の映像データはWi-Fiや5GHzの電波を通じて、無線でATEM MiniへHDMI入力することもあります。詳細は下記をご覧ください。
ATEM Miniの良いところ(活用例)
ATEM Miniでは、カメラの映像だけでなく、HDMIケーブルによる入力映像であれば他の用途にも活用できます。例えば、ゲームの映像出力もHDMIケーブルを介して自由に切り替えることができますので、Youtubeのゲーム実況にも活用できます。
その他に、複数台の監視カメラやPCのモニター出力を接続すると言った用途も可能だと思います。本体は4万円を切る安い価格設定となっており、HDMI切替器としてはコストパフォーマンスの高い製品です。
個人的にとても気に入っているのは、ATEM本体やPCの操作で複数のカメラ映像を切り替えながら1本の映像として記録できることです。通常であれば、
- 複数のカメラの動画記録ボタンを押して撮影開始
- 撮影後に各カメラの停止ボタンを押して撮影停止
- 各カメラに記録されたデータをPCへ取り込む
- マルチカメラビューとして、各撮影データを編集する
といった手間が必要になりますが、ATEM Miniではその工程をスキップできるわけです。撮影データも1本に纏めることができるので、データ節約にも繋がります。
それでは、簡単な使用例をご紹介していきたいと思います。今回は、3台のカメラを映像をATEM miniのHDMI入力端子に接続してみました。
- SONY α7III
- SONY α7RII
- SONY FDR-AX700(ハンディカメラ)
上記のカメラにはmicro HDMIやHDMI端子が備わっていますが、各端子とATEM MiniのHDMI端子に接続し、画面を切り替えながら映像を記録してみました!
上記の動画のように複数のカメラを映像を、好きなタイミングで切り替えてPC側で記録できるというのは面白いと思いました。遅延もなくスムーズに動作しています。続いて、ATEM Miniの外観や簡単な使い方を見ていきたいと思います。
ATEM Miniの仕様スペックと付属品について
ATEM Mini本体の全体像 ©
ATEM Mini本体側面の入出力端子 ©
ATEM miniの仕様は以下の通りです。
仕様 | 説明 |
寸法 | 幅237.5mm、高さ35mm、奥行き103.5mm |
重量 | 550g |
電源 | 付属ACアダプター(12V・1.5A) |
入力映像端子 | HDMI Type-A 4系統 (1080p、1080i、720p) |
入力音声端子 | 3.5mmステレオミニプラグ 2系統 |
出力映像端子 | HDMI Type-A (1080p)、USB Type-C(Web Cam Out) |
外部コントロール | イーサーネットケーブル端子(LANケーブル) |
ATEM Mini用のUSBケーブルとHDMIケーブルについて
購入時に電源ケーブルが付属されていますが、HDMIケーブルやUSBケーブルは付属していないので、必要に応じて入手する必要があります。公式ホームページでは、USBケーブルはUSB Type-C (USB 2.0)に対応していると説明されています。高速なケーブルは必要ないようですが、心配な方は以下のケーブルを用意しておくと無難かと思います。
USB Type-Cケーブルに対応していないPCへの接続には、一方がUSB Type-Aケーブルとなっているケーブルがおすすめです。私の場合は以下を使用しています。
ATEM Miniに必要なHDMIケーブルについては後半で解説しています。
ATEM Miniの入力出力と解像度について
ATEM miniでは、入力されたカメラ映像1080p
(=4Kの1/4程度の解像度)として、映像出力できます。4K映像など、1080pを上回る解像度を持つ映像は1080pに自動変換されます。
出力映像フォーマットは1080p23.98
、1080p24
、1080p25
、1080p29.97
、1080p30
、1080p50
、1080p59.94
、1080p60
に対応しており、無料インストールできるATEM Software Control内で設定変更できます。
映像の形式について不明な場合は、以下の解説記事が参考になります。
ATEM Miniのファンの音について
また、本体内部にはファンが備わっており、起動時にファンが回る音がします。また、処理に高い負荷が掛かる時にはファンが起動します。しかし殆どのケースで無音です。
ATEM Miniの本体側面には通気口がある ©
ATEM MiniとATEM Mini Proの違いとは?出来ない事について
ATEM Miniの注意点としては、入力された4つの映像信号を同時に表示したり同時に記録することはできません。4分割画面表示させるには以下のような機器が必要になります。
同時に最大4台の異なるコンピューター、サーバー、またはDVRを制御するのに役立ちます。
幸い、上位機種であるATEM Mini Proでは4分割マルチビューや、USBのフラッシュメモリへ映像の記録(H.264形式)が可能となっています。以下は、先ほど掲載したATEM Miniの側面の端子に関する写真なのですが、ATEM Mini ProではWEBCAM OUT
と記載されたUSB Type-C端子にフラッシュメモリを接続できます。
例えば、SSDなどの外部ハードディスクをUSB接続し、その記録媒体へH.264
形式で映像を直接記録できるようです。
ATEM Mini本体側面の入出力端子 ©
もし予算に余裕がありましたらATEM Mini Proがオススメです。
ATEM miniの上位機種です。4つのHDMI入力、USBウェブカム出力、HDMI出力、マルチビュー、USBフラッシュディスクへのH.264収録。YouTubeなどへのイーサネット経由の直接ライブ配信にも対応しています。
ATEM Miniの簡単な使い方
実際にカメラの映像出力端子やPC、LANケーブルをATEM Miniに接続してみました。私の環境ではスペースの事情により、壁に配置しています。
ATEM Miniの設置例 ©
入力されたHDMI入力映像の切り替え
ATEM miniでは、入力された4つの映像の中で、いずれかが映像出力されます。現在選択されている映像については、本体内のボタン1から4の中で赤く点灯しているものになります。
ATEM Miniでは、現在表示させている映像の番号が赤く点灯する。この写真では1つ目が出力される。 ©
例えば、2つ目の映像入力を表示させたい時には2番目のボタンを押します。
ATEM Miniでは、2つ目の映像入力へ切り替えるには2を押す ©
選択された入力端子の映像は、USB Type-Cケーブルによって接続されたPCや、HDMIケーブルによって接続された外部モニターに表示させることができます。
またPCではWebカメラとして認識させることができます。iMacやMacBookProでは純正ソフトのQuick Time。Windowsでは無料のキャプチャーソフトによって映像の記録ができます。
映像切替時のエフェクトについて(ディゾルブ・フェードイン時間など)
BlackmagicDesign ATEM Miniでは、本体中の右側に、エフェクト関連のボタン操作が用意されています。
ATEM Mini本体のボタン操作系の全体像 ©
下の画像のように、画面切り替え時の効果は2つのボタンが用意されています。まずは大きなボタンに注目してください。CUTは瞬時に選択した映像へ切り替わります。
ATEM MiniのCUTボタン ©
AUTOは選択した映像を、予め選択したエフェクトで切り替えることができます。
ATEM MiniのAUTOボタン ©
補足として、FTBボタンでは、黒い画面へフェードアウトする効果を演出できます。ライブ配信の終了後などの終わり間際に活用できるようです。
その他に、EFFECTとDURATIONというボタン群があります。こちらはAUTOボタンを選択時の効果を選択できる項目になります。
ATEM MiniのDURATIONボタン群 ©
ピクチャーインピクチャー(映像入力1を小窓でワイプ表示)
BlackmagicDesign ATEM Miniでは、HDMI入力端子の1番目の映像を小さい小窓で表示させることができます。表示させたい位置は、簡易的に左上、右上、左下、右下、OFFの中から選択できます。
ATEM MiniのPICTURE IN PICTURE ©
入力された映像と音声の調整操作について(音量)
BlackmagicDesign ATEM Miniの本体左側では、HDMI入力端子に接続された各映像入力の音量調整ボタン(▲・▼)や、MIC IN(マイク)へ接続された音声レベルの音量調整や有効・無効切り替えボタンが備わっています。
ATEM Mini本体側面の入力映像と音声入力に関するボタン ©
ATEM Miniでは、音声の入力端子が2系統備わっていますが、PCでキャプチャーする際に、USB経由のオーディオインターフェースなどから別で取った音声を記録させることも可能です。私の場合はUSBオーディオインターフェースに対応したマイクを使用していますが、詳しくは後半で接続図を紹介しています。
ATEM Miniの日本語マニュアル 取扱説明書(PDF)
ATEM miniを購入すると、残念ながら日本語の説明書が付属していません。説明書は以下のURLからPDFをダウンロードする事ができます。
ATEM mini 日本語マニュアル
162ページ以降から日本語のマニュアルになります。
ATEM Miniのソフトウェア・ファームウェアのダウンロード
ATEM miniはPC上からもコントロールしたり、本体のファームウェアをアップデートできます。ソフトウェアはATEMスイッチャーと呼ばれています。ソフトウェアについても、残念ながら購入時に付属していませんので、各自でダウンロードする必要があります。
上記のファームウェアは記事を更新時に新しいURLへ変更していますが、ファームウェアは頻繁に更新されているようです。最新バージョンのソフトウェアを確認するには、以下のBlackMagicのサポートセンターHPを確認してください。
BlackmagicDesign
サポートセンター
「ATEMスイッチャーX.X アップデート」と記載されているものがATEM Miniのファームウェア・データになります。
続いて、ファームウェアの更新方法について説明していきます。
ATEM Miniのファームウェア更新方法
ATEM Mini本体を更新するにはATEM SetUpを立ち上げる ©
ATEM Miniの本体ファームウェアを更新するには、次の手順で進めてみてください。
- ATEMスイッチャーの最新データをダウンロード(前述の項目を参照)
- ATEMスイッチャーのインストール
- ATEM SetUpというソフトを起動する
- ATEM SetUpでSoftware Updateのウインドウが表示されるのでUpdateを選択
という手順で、ATEM Mini本体のソフトを最新に更新できます。
ATEM Miniとカメラの接続にはHDMIケーブルが必要
ATEM miniとカメラ、もしくはゲーム機などの映像出力端子を繋ぐにはHDMIケーブルが必要になります。詳しくは以下の記事後半で解説されているHDMIケーブルについてをご確認ください。
ATEM MiniのBluetoothやキーボードによる遠隔リモート操作
この項目でご紹介するのは、BlackmagicDesignの製品HPにも触れられている「リモートコントロール・ソリューション」の話となります。BlackmagicDesign ATEM MiniやATEM Proでは、DHCPクラアント機能が内蔵されています。本体側面にLANケーブル(イーサーネットケーブル)の差し口が用意されており、LANケーブルを接続すると、IPアドレスが割り振られます。
IPアドレスは自動的に取得されますが、後半でもご紹介するソフトウェアのATEMスイッチャーで固定IPアドレスに設定することもできます。
これは何ができる機能なのか簡単に説明すると他の端末からATEM Miniの遠隔操作が可能になる機能です。例えば撮影例では、以下の接続図のオレンジ色線のような配線を行っています。
ATEM Miniとカメラなど各機材の接続例 ©
手元のプレゼンター(Bluetooth対応のレーザーポインター)でATEM Miniの映像を切り替えながら記録しています。
ATEM MiniのDHCPクライアント機能を活用したリモコン操作
ATEM MiniやATEM Mini Proでは、Wi-Fi、もしくは有線ケーブルで接続されたPCやiPadなどのタブレットから遠隔でコントロールが可能になります。屋内だけでなく、ネットワーク構成によっては遠く離れた地域から外部コントロールすることもできます。
以下の動画の前半では、Nintendo SwitchのコントローラーをPCとBluetooth接続し、同ローカルネットワーク上にあるATEM Miniのボタン遠隔操作を行うリモコンとして活用してみました。
上記の動画のように応用次第では
- Nintendo Switchのコントローラー(Joy-con)
- キーボードのショートカット操作
- Bluetoothのポインター(プレゼンター)
- AmazonEcho
- MIDIコントローラー
- 一定時間によるHDMIの自動切り替え
など、ボタン操作や音声トリガーによって、指定の映像を切り替えるといった制御も可能になります。NintendoSwitchからの遠隔操作については、Twitterの方でアイディアを教えて頂きました!
私の場合は、ATEMI Miniで直接ボタン操作をせず、一定間隔で複数のカメラの自動切り替えさせる動作を行いたかったので、望みの動作ができて良かったです。例えば以下の動画では3台のカメラを3秒間隔で自動的に切り替える動作をATEM Miniにセットしてみました。
こちらの具体的な方法や導入手順については、機会があれば別記事として解説したいと思います。自宅で演奏やライブを複数のカメラで自撮りするなどの活用シーンで便利になりそうです。
以上のように、ATEM Miniでは、操作できる人数が少ない環境でもある程度自由にカスタマイズできる機能を有していることが分かりました。
音声がズレてしまう問題の対策方法
ATEM Miniを使用して映像や音声を記録していると、どうしても気になるのが映像と音声のズレ(遅延)でした。これは、映像や音声をそれぞれ別のプロセスで変換している最中に、僅かながらズレてしまうのが原因のようです。
特に、PCを使ってATEM Miniの映像をリアルタイム配信したり、映像をWebカメラ映像として記録したい時にズレが発生します。結果的に音声が早まったり遅くなったりして、一定ではなく不規則(ランダム)に食い違ってしまう現象が発生します。
この問題を解決するには次の方法がオススメです。
カメラのHDMI経由で音声を入れる
カメラの音声入力端子にマイクなどを使って、音声を入れます。HDMIケーブル経由で、音声と映像を一緒にATEM Miniへ入力することができます。
ATEM Switcherで遅延を設定する
ライブ配信で有効な方法です。PC側にインストールするソフトウェア「ATEM Switcher」で、ATEM Miniの入力端子Mic 1
とMic 2
に入る音声を遅くさせる機能「Delay」を使うと、大まかにズレを微調整できます。
しかし、遅延は不規則に発生する事が多いため、この方法でも完全に対処することは難しいと思います。
ATEM MiniのHDMI出力をキャプチャーで記録する
ライブ配信ではなく、映像をPCに保存したい時に最適な方法です。ATEM MiniのHDMI端子から出る映像が遅延の少ない事を利用した対策方法です。
1で紹介した方法に加えて、ATEM MiniのHDMI OUTを、別売りのビデオキャプチャーで記録すると、ズレの無い映像音声データを記録することができます。
私の場合は、ATEM MiniのHDMI出力端子を1080pに対応したHDMIキャプチャーの入力端子に接続し、最終的な映像を記録しています。
重要なのは、キャプチャー本体内部で映像を収録できるタイプの製品を使うことです。