Zoom M3 MicTrakを購入しましたので、外観や収録した音声を踏まえて感想を書いていきたいと思います。Zoom M3はショットガン形状のMSマイクで、一眼ミラーレスカメラなどに搭載できる小型のマイクです。

MSマイクとは、前方にある音を録るMidマイクと、横方向を中心としたステレオ音声を収録できるSideマイクの2種類からなる製品です。単一指向性マイクのように一部のエリアを収録したり、双指向性マイクのように広い範囲を録音するなど自由度の高い録音が可能です!

Zoom M3 Mictrakは在庫が少なく入手しにくい状況ですが、Amazon以外にもサウンドハウスさんなどで扱ってます。

実際に録音した結果は、以下のYoutubeの動画で公開していますのでご覧ください!

上記の動画の中では、電車の往来する様子をステレオで収録して、各マイクの比較を行っています。前半ではZoom M3の外観や電池の収納方法、各端子やボタンの配置、MS-RAWで録音したデータをPCソフトで編集する流れもご紹介してます。

また、実際にZoom M3 Mictrakを使って音声を収録してみましたので次のYoutube動画をご覧ください!昼間の15時頃は、屋外で風が強い中で90°の設定をして音声を収録しています。夜のお祭りでは120°の設定で音声収録してみました。

特徴的なのは、MS-RAWに対応した32bit Float対応 ICレコーダーである事です。なんとマイク本体のmicroSDカードに音声を記録できるんです!

ZOOM M3本体内で音声を記録できる(microSDが挿入できます)
ZOOM M3本体内で音声を記録できる(microSDが挿入できます) ©

そして更に凄いのが、32bit Float対応 ICレコーダーの機能も兼ね備えています。32bitの素晴らしさはZoom F3のレビュー記事で詳しく書いていますので、初めての方はそちらの記事もご覧ください!

簡単に説明すると、通常は音割れに注意してカメラの入力レベルなどを気にする必要がありますが、Zoom M3 Mictrakでは、音量調整することなく大きな音から小さな音まで手軽に収録できるのが特徴です。

ZOOM M3本体。カメラに搭載して使うVlog用途にもぴったり。
ZOOM M3本体。カメラに搭載して使うVlog用途にもぴったり。 ©

実際にカメラに搭載して音声を収録してみたところ、小型軽量ながら自在にステレオや音声を調整できるので、撮影に集中できるのが良いです。特に音声収録だけでなく、動画撮影をされている方にとってはメリットが大きいと思います。バタバタしていると、音声に集中できない事が多いので安心感が違いました…!

目次:ZOOM M3 MicTrakのレビュー

ZOOM M3 Mictrakに最適なSDカードと容量サイズ

ZOOM M3 Mictrakでは、4GBから32GBのmicroSDHCカードや、64GBから1TBのmicroSDXCカードに対応しています。ひとまず私の場合は、普段から使ってる以下のSDカードを使ってみました。

モノラルとステレオ両方録音できるマイク

前半でも特徴として挙げた通り、このマイクの凄い所は録音したデータから自由にステレオ感を調整できるのが長所です。Zoom M3 MicTrakは二通りのステレオ調整方法があります。

Zoom M3 Mictrakのモノラル・ステレオ調整方法
  1. 本体のボタンで切り替える

    マイク本体のSTEREOボタンを押すたびに、モノラルとステレオ(90°または120°)を切り替えられます。

  2. microSDカードのデータから後調整する

    記録された音声データを使って、PCソフトで自由にステレオ感を変更できます。仕組み上、同時刻に記録した音声から複数のステレオパターンで別々に書き出す事も可能です!

まずは、1つ目の調整方法である本体ボタンからの切り替えについて見ていきます。マイク本体のSTEREOボタンからは、次のようなモノラル・ステレオ切り替えが可能です。

  • MONO (指向性の鋭いモノラル音声)
  • 90° (ステレオ感のあるサウンド)
  • 120° (90°より更に広いエリアのステレオ)
ZOOM M3本体のボタン。左上から2つ目にあるのがSTEREOボタン
ZOOM M3本体のボタン。左上から2つ目にあるのがSTEREOボタン ©

マイクのステレオとモノラルは自由調整できる(MS-RAW対応)

続いてPCソフトからステレオ感を後調整する方法ついて見ていきましょう。記録されたmicroSDカードの中身を見ていくと、通常の収録音声データ(.WAV)に加えて「MS-RAW」フォルダーが作成され、その中にMS-RAWデータ(〜RAW.WAV)が作られます。

MicroSDカードに記録される音声データ
  • .WAVファイル

    通常の音声データ。Zoom M3 Mictrak本体で選択したモノラルまたはステレオで集音されています。

  • MS-RAWフォルダー〜RAW.WAVファイル

    MS-RAWデータ(デコードが必要となる後調整前提のデータ)。PC専用ソフトの「M3 Edit&Play」でステレオ感を自由に調整して、32bit-Floatデータで書き出し可能です。

まず、通常の収録音声データはZoom M3 MicTrak本体で選択したモノラルまたはステレオ音声となります。対して、MS-RAWフォルダーに記録されたデータはPC専用ソフトの「M3 Edit&Play」でステレオ感を0°(モノラル)から150°まで自由に変更ができます。

「M3 Edit&Play」の画面。録音したMS-RAWデータを使えば、後からステレオ感を自在に変更できる!
「M3 Edit&Play」の画面。録音したMS-RAWデータを使えば、後からステレオ感を自在に変更できる! ©

例えば、撮影時にはモノラルで録音しておいて、後からmicroSDカードへ記録しているデータを使って、ステレオ音声として書き出す事も可能です。つまり1つの瞬間から複数のステレオ・パターンを書き出し出来ちゃいます!…いや、これは本当に凄すぎます 😳

実際に、1度の収録データから複数のステレオ音声を書き出してみた結果は、下記のYoutube動画でご覧ください。それぞれの音声にも特徴が異なりますので面白いですよ!

私の場合は、SONYのミラーレスカメラを使っているのですが、Zoom M3 MicTrakの登場により、純正マイクのECM-B10ECM-B1Mが霞んでしまいそうなくらい画期的な神マイクだと感じました 😅 ECM-B10はハンドリングノイズやホワイトノイズが乗るという口コミも気になり購入を躊躇っていたのですが、Zoom M3にして良かったと思います。

ZOOM M3本体
ZOOM M3本体 ©

恐らく、ショットガンマイクで32bitのMS-RAW内部収録に対応しているマイクは、このマイクしかないと思います。そう考えると、もの凄く革命的な商品ではないでしょうか!

コンパクトでICレコーダー付きのショットガンマイク

ショットガンマイクはZoom M3 MicTrakの他に、Sennheiser MKE600なども持っているんですが、そのマイクと比べて見ても、非常にコンパクトです。そして、当たり前と言えば当たり前ですが、MKE600は本体自身で音量調整やモノラル・ステレオ感が調整できません。

Sennheiser MKE600(左)とZoom M3 MicTrak(右)との比較
Sennheiser MKE600(左)とZoom M3 MicTrak(右)との比較 ©

MKE600の場合は、もともとXLR端子のキャノンマイクなので、32bitフロート形式で音声を記録するにはICレコーダーが別途必須になり、機材も大きくなってしまいます。詳しくはZoom F3とMKE600を組み合わせた例をご覧くとわかりますが、配線も複雑になります。

これに対して、手軽に音声を撮りたい時には、Zoom M3 MicTrakを使うだけで、本体内のSDカードへ32bit-Floatで記録できてしまうので、すごくメリットがあるなと感じました!

Zoom M3 Mictrak対応のウインドウジャマー(風防比較)

Zoom M3 MicTrakを使っていくにあたり、少し気になったのがウインドウジャマーをどうするか?です。マイクの購入時には、付属されるマイクスポンジがあるものの、対応するウインドウジャマーは発売されていませんでした。屋外で風が強く吹くようなシーンでは風ノイズが入りそうです。

Zoom M3 Mictrak用のウインドウジャマーをどうするのか?
Zoom M3 Mictrak用のウインドウジャマーをどうするのか? ©

そこで現在試しているのが、Sennheiser MKE600用のウインドウジャマー「MZH600」と、「AZDEN SWS-100(アツデン製)」という製品です。

普段使ってるSennheiser MKE600用のウインドウジャマーをZoom M3 Mictrakへ装着してみた
普段使ってるSennheiser MKE600用のウインドウジャマーをZoom M3 Mictrakへ装着してみた ©
Zoom M3 MicTrak用に試してみたウインドウジャマー。(左)Sennheiser MZH600(右)AZDEN SWS-100
Zoom M3 MicTrak用に試してみたウインドウジャマー。(左)Sennheiser MZH600(右)AZDEN SWS-100 ©

実際に装着してみると、Sennheiser MZH600に比べて、AZDEN SWS-100は少々小振りに見えます。

Zoom M3 MicTrak用に試してみたウインドウジャマー。(上)Sennheiser MZH600(下)AZDEN SWS-100
Zoom M3 MicTrak用に試してみたウインドウジャマー。(上)Sennheiser MZH600(下)AZDEN SWS-100 ©

ただし、AZDEN SWS-100の方が深く装着できるので、Zoom M3 Mictrakのサイドマイクもしっかり覆うことが出来ました!

AZDEN SWS-100とZoom M3 Mictrak
AZDEN SWS-100とZoom M3 Mictrak ©

実は、Zoom M3のサイドマイクは電源ボタンのすぐ近くに配置されています。ステレオ収録する際には、サイドマイクも覆っておかないと風ノイズが入りそうですよね 😅 それを考慮するとSWS-100はとても良さそうな風防に見えます。

これに対して、MZH600の方はZoom M3 Mictrakのマイクにぴったりではあるものの、サイドマイクはギリギリ覆われているような状態で、挿入部分から内部スポンジを経由して風が入ってきそうな印象でした。

Sennheiser MZH600とZoom M3 Mictrak
Sennheiser MZH600とZoom M3 Mictrak ©

実際に2つのウインドウジャマーへ風を当てて試してみると、AZDEN SWS-100の方が風防効果がありました。

以下のシーンでは、髪の毛が風で舞ってボサボサになるくらい強風でした。春先の風が強いシーズンで1日使ってみたところ、風切り音などのノイズは上手く軽減しながら、声や環境音をキレイに収録してくれました。

もちろん、ちょっとした風でしたら全く気にならないレベルまで風切ノイズが低減されます!

価格はAZDEN SWS-100が安いのに意外な結果でした(MKE600でも使えそう)。Zoom M3 Mictrak用の風防はこれで十分だと思いましたので、今後も愛用していこうと思います。

Zoom M3 Mictrakの外観(電池やショックマウント)

冒頭でも掲載しているYoutube動画で、Zoom M3 Mictrakの外観についても詳しくご紹介していますが、本体の裏側には単3電池が2本収納できます。

Zoom M3 Mictrakは単3電池が2本収納できます
Zoom M3 Mictrakは単3電池が2本収納できます ©
実際に電池を入れてみた
実際に電池を入れてみた ©

最近のマイクは専用バッテリーを内蔵している製品も多いですが、ZOOM製品のように単3電池を素早く交換できる仕様は、連続使用する際に助かります。また、この後でも触れていきますが、他のZOOM製ICレコーダーと同じく、USB Type-C端子から電源を供給して使う事もできます。

USB-C端子でPC音声入力にも活用できる

Zoom M3 Mictrakの本体右側面にはカメラに3.5mmステレオプラグで繋ぐためのLINE OUTが設けられています。また、USB Type-C端子も備えており、モバイルバッテリーから給電して連続使用したり、PCに繋いでサウンドデバイスとして認識ができます。マイクの音声をPCへ入力することも可能なので、配信やナレーションなどの吹き込みにも活用できます。

本体右側面
本体右側面 ©

ヘッドフォン端子は音量調整が可能

続いてZoom M3 Mictrakの反対側面も見ていきましょう。こちらもシンプルで、ヘッドフォン端子(イヤホン端子)と出力音量を調整できるボリューム調整ボタンが備わっています。

本体右側面
本体右側面 ©

Zoom M3 Mictrakは単独でICレコーダーとして使うこともできるので、LINE OUT端子とは別に、モニタリング用の端子が用意されているのは非常に有り難い配慮ですね!

少し紛らわしいですが、ヘッドフォン端子の音量レベルはmicroSDカードへ収録される音声データには影響を受けません。ヘッドフォンで音割れしていても、データの方では復元できる場合が殆どのようです。(仕様上119133 dB SPLの耐音圧以上の音が入りこむと、SDカードのデータ上でも音割れが発生しますが、かなり煩い騒音以外は大丈夫みたいです。)

ショックマウント

続いて付属されるショックマウントです。マイクを挟み込んで、マイクに余計な振動やノイズが伝わらないようにショックを吸収してくれる役割をする重要なパーツです。

Zoom M3に付属されるショックマウント
Zoom M3に付属されるショックマウント ©

全体的にそうですが、マイク本体もショックマウントも樹脂製でなんだか安っぽい印象はあります 😅 ただ、実際に使ってみると機能性や細かな配慮がされており、その不安は払拭されました。

ショックマウントには、同じく同梱されている3.5mmケーブルを固定できるクリップが内蔵されています。ケーブル自身から生じる振動も吸収してくれる構造になっているようです。

Zoom M3に付属される3.5mmケーブル
Zoom M3に付属される3.5mmケーブル ©

Zoom M3 Mictrakのマイク直径は22mmのようです。サイズさえ合えばRycoteのショックマウントなどの他社製品も装着できそうです。

Zoom M3 Mictrakの操作方法

続いて、Zoom M3 Mictrakのボタン操作について詳しく見ていきます。M3本体内のボタンでは、音声を記録開始したり、再生やステレオ感の変更ができます。

ZOOM M3本体のボタン
ZOOM M3本体のボタン ©
ボタン 操作内容 呼び出せる機能
再生・停止ボタン 1回短押し 記録した音声の再生と停止
録音ボタン 1回短押し 録音の開始と停止
録音ボタン (録音開始時)長押し 誤操作防止機能が有効に(REC HOLD機能)
音量ボタン 1回短押し ヘッドフォン端子の出力音量の調整
LO CUTボタン 1回短押し 120Hz以下の低音域をカットします(LOW CUT機能)
STEREOボタン 1回短押し 押すたびにOFF(モノラル)・90°ステレオ・120°ステレオを切り替えます
電源ボタン 長押し 電源のON・OFF

忘れやすい機能として注意なのが、誤操作防止機能です。知らないうちにボタン操作を受け付けなくなった時や、ボタンを押しても何も操作できない時には、この誤操作防止機能が有効になっているか確認してみましょう。

残念ながらZoom M3の録音データ再生機能はごく単純なもので、記録した直近のデータしか再生できません。

microSDカードのデーターをPCから読み出しする

Zoom M3 Mictrakでは、本体に記録したSDカードの音声データをUSBケーブル経由で読み出すことができます。

  1. まずUSB-CケーブルでZoom M3をPCと接続する
  2. 電源OFFの状態からSTEREOボタンを押しながら電源ボタンを押す
  3. LEDインジケーターはオレンジ色で点滅する

File Transferモードと呼ばれている機能ですが、本体のインジケーターがオレンジ色になっていればOKです。上手くいくと、PC画面にSDカードのデータが表示されます。

microSDカードのフォーマット方法

Zoom M3 Mictrakの本体内でmicroSDカードを初期化することができます。詳しくは以下のような手順になります。

SDカードのフォーマット方法

Zoom M3 Mictrakの本体に挿入したmicro SDカードは、本体のボタン操作からデータ消去&初期化することができます。

  1. 予め本体の電源をOFFにしておく
  2. 録音ボタンを長押しながら
  3. 電源ボタンを長押しする
  4. 本体のLEDランプ(インジケーター)が点滅します
  5. 再生&停止ボタンを押すとフォーマットが開始される

    → 他のボタンを押すとフォーマットが中止されます。

取扱説明書(PDFマニュアル)

Zoom M3 Mictrakの操作方法や各部の説明はZoom公式サイトで公開されている説明書データが参考になります。

Zoom M3 Mictrak 取扱説明書|Zoom公式ページ

上記の説明書にはZoom M3本体の操作方法だけでなく、専用ソフト「Zoom M3 Edit&Play」の使い方も一緒に記載されています。

音声データ編集ソフトZoom M3 Edit&Play

Zoom M3 Mictrakの専用ソフトは「Zoom M3 Edit&Play」と呼ばれており、M3で録音したデータの再生をしたり、ステレオ感を自由に調整できます。MSデコードをしたい方は、以下のZoomの公式ページからソフトをダウンロードできます。

Zoom Mictrakシリーズ|Zoom公式ページ

Zoom M3 Edit&PlayはWindows対応版とMac対応版が用意されています。

Zoom M3 Mictrakのスペック(仕様)

仕様 内容
バッテリー持続時間(目安) アルカリ乾電池:約12時間、ニッケル水素蓄電池(1900mAh):約11時間、リチウム乾電池:約21時間 ※LINE OUTからカメラに接続し、ヘッドフォン接続しない状態の持続時間
寸法 71.3mm(W) x 201.3mm(D) x 38mm(H)
重量 135g
Midマイクの最大入力音圧 133 dB SPL
Sideマイクの最大入力音圧 119 dB SPL